市場の解としての合理妥当性

2011.12.30

春闘によるこのような賃上げは、高度成長時代の賃金決定、そして労働の成果分配の方式として多くのメリットがあった。ひとつは、事実上の合理的な所得政策の役割を果したことである。高度経済成長時代には、日本経済は毎年実質で平均一〇%程度も成長をしたが、こうした急激な経済の拡大は資材や労働力の供給などでボトルネ。クにぶつかる事が少くない。そうしたボトルネックが発生すると部分的に極端な値上げや賃上げが行われてインフレ加速の引き金になる事が多い。

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欧米先進諸国は一九七〇年代のインフレの昂進時に、物価と賃金の相乗作用の悪循環を断ち切るために、しばしば外部からの強制による所得政策の導入を余儀なくされた。日本の場合にも欧米諸国と類似した背景条件はあったが、春闘による世間相場への収斂が、突出した賃上げを規制してインフレの引き金になる事を防ぐ効果があり、外部的な所得政策の導入を回避させるうえで重要な役割を果したといえる。春闘の準備と交渉をつうじて労使が経済環境をひろく深く検討し、包括的な配慮をふまえた賃金決定を行い、それが世間相場となって経済全般の賃金と価格改定に影響を及ぼすという春闘賃上げのしくみは、いってみれば合理的な市場の解を主体的に探りあてるプロセスである。したがって春闘を活用することによって、日本経済は強制的な所得政策を導入することなく、市場の条件と整合的な賃金決定を実現する事ができたのである。いまひとつは、勤労者の所得を全体として底上げするうえで、大きな役割を果したことである。




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